○西宮スーパー公務員塾 兵庫県西宮市
1.経緯
今回は市役所を訪問して視察をしたのではなく、表題の公務員塾を主宰した市職員個人に詳細を教示いただいたものです。
私(内田)が定期購読しております「公職研」という公務員向けの月刊誌に、この公務員塾主宰者の投稿を読み、以前から関心を持っておりましたところ、3月市議会において質問で取り上げる「職員の人材育成」ということから、参考にするため、視察したものです。
主宰者、杉田水脈(みお)さんは西宮市の職員。同市では地元FM放送で議会中継が庁内にも流されており、ある議員が職員育成について情熱的に提言されている姿に触発され、「職員であるわれわれがまず立ち上がろう」と決意をされた。
有志を結集したが、当初は職場に関する愚痴話に終始した。これではいけないと企画を立ち上げ、スーパー公務員塾の実施となった。
この塾はひとまず終了したが、その後全国の注目するところとなり、杉田さんは各地から招聘され、コーディネーター、アドバイザーとして現在も活躍されている。
2.公務員塾の概要
・杉田さんは経済産業省の鈴木英敬氏と知己を得て、氏の提唱する「スーパー公務員養
成塾」に着目した。
21世紀型公務員=スーパー公務員とは、
@自らの志をもって、それを実現するために行動する。
A自ら課題を発見し、前例にとらわれず、臆することなく正しい解決策に取り組む。
B現場、市民の方の実生活を踏まえた政策実現のため、創意工夫する。
(以上、HPから概要を要約)公務員をいう。
・これを基に、杉田さんは「西宮型」公務員塾を立ち上げた。
以下のとおり、05年9月〜06年1月までに10回の塾を開催した。
(日付省略、講師名のみ紹介)
@オリエンテーション
A前志木市長 穂坂邦夫氏
B潟潟塔Nアンドモチベーション社長 小笹 芳央氏
松山市地域経済課長 竹村 奉文氏
C先駆舎代表取締役 眞邊 明人氏
韓クルート首都圏HRディビジョン事業開発グループチーフプランナー 植野 毅氏
D中間報告
E参議院議員 鴻池 祥肇氏
リクルート住宅情報タウンズディビジョン東海営業部マンショングループゼネラルマネージャー朝野 展昌氏
F潟Iフィス原田 原田 隆史氏
三重県教育委員会学校教育分野総括室長 坪田 知広氏
G韓クルート進学情報ディビジョンマーケティングディレクター 松本 研二氏
潟潤[クスアプリケーションズ社長 牧野 正幸氏
H小樽市企画政策室主幹 木村 俊昭氏
慶應義塾大学野球部監督 鬼嶋 一司氏
I最終プレゼンテーション大会
・講師の話を聞くだけでなく、政策提案のグループワークも実施。
4つのグループワーク
@人財データベース「宮創りっ子ライブラリー」の構築
A「OUTSOUCE!」
B「宮っ子まちづくり大学構想」
C西宮市版職員採用制度
それぞれが最終プレゼンテーションで政策提言を発表した。
3.公務員塾を終了して
・普段接することのないトップクラスの企業人との出会いは大変刺激的だった。組織人
として仕事をするということの意味を再確認できた。
・他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる。
・出る杭は打たれる。でもその杭が折れたり曲がったりしなければ大丈夫。
・組織が悪い、上司が悪いでは、どこまでも「他責の文化」だ。
以上のような「気づき」を経て、現在塾のOBで「はっぱ隊」を結成。
それぞれの地域、職場で「自分のできること」に取り組んでいる。
杉田さん自身、課内異動で現在の持ち場に。そこで職場改善にこの塾で学んだことを存分に活かしている。
4.感想
上記は、概ねインターネット上の「公務員PowerStation」のページに紹介された杉田さんご自身のレポートからの要約になってしまいました。
西宮市に杉田さんを訪問してお話いただいた内容はさらに、この公務員塾を経験して後の全国各地での講演の内容にも及び、また遡って、公務員塾立ち上げに際しての内外からの批判についてもお聞きすることができました。また、4つのグループワークの中身についてもご教示いただき、例えば西宮市版職員採用制度の提案では「リクルーターをやって良い職員を採ろう」など、なるほどとうなずける提案内容であることを知ることができましたし、全国レベルで私もよく存じ上げている経営アドバイザーなど、要人を招聘できた経緯などについても教えていただくことができました。
ここからは私の杉田さんへの印象ですが、西宮市役所でお会いした杉田さんはごく普通の市役所職員という感じで、どこにこのような実行力が秘められているのか、お話を伺いながら次第にわからなくなってきました。
傑出した特技や経歴をお持ちでない、この一人の女性が、淡々とこのようなプロジェクトをやってのけた、ということを、私は未だに不思議な感じで振り返っており、ここにうまく説明することができません。
けれどもそのことがそのまま、丸亀市においても職員の誰かが、気づき、引き受け、旗を振らなければならない、その人が丸亀市役所に存在しないということはない、ということに思い当たらせてくれます。それは抜きん出た誰か、ではない、ということです。
私はこの視察で得たことをこの度の総括質疑に盛り込ませていただき、「職員大量退職時代の職員育成」とのタイトルのもと、さまざまな観点から質問と提言をさせていただきました。理事者との質問・答弁という形をとる以上、私に手が届くのは、こうした自主研究グループを市役所としてできるだけ支援してほしい、と、その方策の実現を訴えることに止まりましたが、本会議を見つめた職員の皆さんにも何かのインパクトが届いたのか、気にかかるところです。
市役所幹部がどれほど手厚く、職員の研究グループや個人の研究意欲に応えようと仕組みを整えてくださったとしても、肝心の職員個々人が「それは私ではない」と思っている限り、ここに言う「21世紀型公務員」は丸亀市には現れないでしょう。
そのほうが絶対に楽である、それは、私もかつて公務員をしていたのですから、人並み以上に理解します。
公務員にとっても「受難」の時代が来た、と、そのように考えるのでなく、いよいよ本来の、「公職研」誌に前国立市長が自らの公務員時代を振り返って説いた「面白くてしかたがない」公務員像にたどりつく時が到来したと、そのように考える職員の方が、これからどれだけ輩出されるか、そこに、職員個人のクオリティオブライフと、そして市民全員のそれとがかかっていると思われます。
この出張復命を書いている時点で、新年度の人事異動の内示がなされ、庁内はその準備に慌しい様相です。
職場の配属が変わり、部屋のレイアウトが変わり、仕事や仲間が変わった、それだけでは、この時代のニーズに対応しきれません。
これを好機と捉えて、市役所の職員育成システムの再構築をお願いしたいとともに、個々の職員の皆さんにも、スーパー公務員を目指そうと、声を大にして訴えたいと思います。